卒業生の声(リワーク/転職)

H.Mさん(50代:男性)

50歳を迎えて不意に動悸や胃腸炎などの著しい体調不良が頻発するようになりました。いろいろ検査を受けましたが、何も見つからないとのことで心療内科の受診を勧められました。

専門職のため上司が年下になったり、従来とは業務範囲が変わったりしたこともあって、精神的なストレスは感じていましたが、うつ病などのメンタル不全とは考えてもいませんでした。しかし、医師からは「うつ状態」との診断を受けてしまったのです。

自分なりに体調回復の機会と捉えて休職し、筋力トレーニングやウォーキングなどに努めましたが、頻度は減ったものの時折、体調不良に見舞われる状態が数ヶ月続く有様でした。復職の目処が立てられずにいたところ、会社からリファイン就労支援センターに行ってみたらどうかとの提案を受けました。

体験初日から利用者の方々とのグループワークに参加しましたが、明るく和やかに、そして活発に議論される様子を見て、本当にこの方々はメンタル不全を患っているのだろうかと感じるほどでした。センター利用には自治体への申請が必要なのですが、認知行動療法を行なっているリワーク施設など聞いたことがないと医師や福祉担当者から聞き、そんな貴重な施設なら通ってみるのも悪くないと考えました。

ところが、1日行ったら風邪で1週間休むような状態が続きます。体力向上に努めてきたのに自分の身体は一体どうなっているのか、本当に復職が可能なのかと自己嫌悪が募りました。やがて、更年期障害かもしれないというスタッフからのアドバイスを受けて泌尿器科を受診すると、実際に男性ホルモンの分泌が低下していることがわかりました。

ホットフラッシュやイライラしやすくなるといった更年期障害の主訴が見られなかったために心療内科の医師には可能性を否定されてきたので、ようやくたどり着いた原因に一安心できました。更年期障害は気力や体力、免疫力を低下させ、様々な体調不良をもたらします。それに伴って脳の機能や判断力も低下することで、ストレスを増幅させ、メンタルが悪化するというスパイラルに陥っていたことがわかったのです。フィジカルとメンタルの相関がこんなに強いとは思いも寄らないことでした。

ストレスの原因は、職場でのコミュニケーション不足によって生じた上司や同僚に対する不信感にありました。自分なりにコミュニケーション上の課題は概ね認識していたつもりでしたが、気質や思考の癖、コミュニケーションの癖をどうすれば改善することができるのか、それを考え、悩むこと自体がストレスになっては元も子もない、自分は自分であって無理に変えられるものではないと目をつぶってきたのでした。

グループワークや自分取扱説明書のためのスタッフ面談を通じて、自分が他者からどのように見られているのかについて改めて気づかされていきます。しかし、常に自分がどのように見えているのか、ネガティブに見られないためにはどのような言動をすれば良いのかと悩んでいたらキリがありません。

口角を上げて笑顔にする、姿勢を正す、腕組みしない…。こんな表層的で簡単なことでも他人からの見え方は大きく変わります。その場その場で自分は一体どうしたら良いのだろうと思い悩むのではなく、即物的でシンプルな行動レベルに落とし込み、無意識に実践できるまで繰り返していけば解決できることがある。そのことに気づかされたことで、とても気持ちが楽になりました。

そして、相手に対する先入観や悪印象を減らすことができれば、相手が持つであろう先入観や悪印象を減らす可能性につながり、率直なコミュニケーションがしやすくなります。自分が自動的にしてしまう思考や判断を一旦保留にして、自分とは違う立場に立って考え直してみれば、そのような見方や考え方もあり得るのだと気づき、それは自分とは違う、受け入れられないと拒絶することが減っていきます。

それからは、グループワークが楽しいものになっていきました。利用者の方々から自分の発言で気づいていなかったことを発見した、別の見方ができるようになったと言われることが増えるに連れ、自分の考えを受け入れてくれる人がいて、自分が人の役に立てるのだという実感が湧いてくるようになっていったのです。

リファイン就労支援センターには、結局13ヶ月間お世話になりました。自宅療養も含めると1年半。この期間は無駄どころか、人生において本当に価値のある財産になったと感じています。職場や学校など通常の生活では決して得ることのできない経験をさせてもらえたからです。医師やカウンセラーと違い、自分自身でそれぞれ異なる悩みに直面している利用者の方々と毎日話すことが心の支えになりました。そして、どうすれば自分がこれからの人生を楽な気持ちで生きていけるのかを知るきっかけを与えてもらえたからです。

とはいえ、リファイン就労支援センターのプログラムが誰にでも効果があるとは思いません。中には、自分には合わないと感じて途中で退所される方もいます。しかし、何が本当に自分の回復につながるのかは、自分で体験し、実感してみなければわからないことです。少しでも興味を持たれたなら、しばらく体験してみることをお勧めします。